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 家は焼け落ちたそうです。略奪も起きているので、もう住める状態ではないと思います。  父は新宿の別宅に避難しています。   でも、そこには父の女もいるし、私はもう、父と一緒に暮らせるとは思いません。  火災で家を失くした人のために、避難所があるのは知っています。でも、そこの治安は最悪な状態になっています。私たちパシュトゥン人は、こういうときに助け合うことができないんです。何をされるかわかっているのに、ああいう場所に行く覚悟は私にはありません。  池袋に行ったのは、どこかで、牟田君が助けてくれることを期待していたような気がします。  牟田君は、助けを求められれば必ず手を差し伸べてしまう。私が特別というわけではなく、誰にでも牟田君はそうしてしまう。  だから、牟田君を巻き込んではいけないとわかっていたのに。卑怯ですね、私。こんな風には絶対なりたくなかったのに……  
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