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 年末が近い。  横浜駅前の雑踏に、俺はたたずんでいた。  街はきらきらと華やぎ、穏やかな雑踏に満ちている。  スマホが震え「今 どこ?」とラインが入った。  俺がスマホを取り出す動作を見ていたのだろう、顔を上げると、かすかに見覚えのある少女が、二十メートルほど先でぎこちなく手を挙げた。  俺は微笑んで手を振り返す。  少女の顔がぱっと輝き、犬がしっぽをふるように忙しく手を振る。  駆け寄るようにお互い近づき、顔を見つめあった。 「お兄ちゃん、おっきくなった」 「沙耶も、大人っぽくなったな」 「もう中学生ですから」  母は父と妹の連絡先を知っていた。  自分から父と接触することはしなかったが、俺にそれを教えることは拒まなかった。  両親がどうして離婚したのか、そのとき何があったのか、実は俺は何も知らない。  思えば、父の側から接触があってもよかったはずなのだ。母がああいう状態だと父が知っていたなら、俺は父から見捨てられたようなものだった。 「行こう! お父さん、車で待ってる」  うきうきした様子で妹は言うのだが、俺には竦むような思いがあった。  最近は出なくなった吐き気や胸痛の気配が、身体の奥でうごめいた。  と、背中に衝撃を受けた。 「ここまで来てビビんな」   六華の掌が俺を叩いたのだった。 「うわぁ……六華さんですか? ……うわぁ」 「そんな挨拶があるか」 「だって、モデルさんみたい」 「私なんかせいぜいプラモデルだ」 「わりとおやじギャグだぞ、それ」 「なあ、私は本当にここにいていいのか」 「ここまで来てビビんな」 「うるせっ」  そう吐き捨てた六華の息がふわりと白いかたまりになる。  雪でも降ればいいなと、俺は空を見上げた。             
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