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 その夜、本郷から連絡が来た。  俺の頭の怪我の治療費について、オンライン入金か現金手渡しかどちらかを選べという、事務的なテキストメッセージだった。  現金を選んだ。  本郷は、クラスの誰とも私的な会話をしないが、周りの事がよく見えていた。あの駅で俺が発作を起こしたことも、たぶん知っているのだろう。  他の誰も、俺が押し隠しているものの存在に気づいていない。少なくとも、誰かにそれを指摘されたことは、今までなかった。  東口のマックで会ったとき、本郷もなにか、人に見せたくないものを抱えているのを感じた。  見られたくない。でも誰かに気づいてほしい。  俺と同じ、そういう矛盾した欲望が彼女のなかにもある。そう感じた。いや、そう決めつけた。  俺は彼女のことが知りたかった。彼女に俺がどう見えているのか、教えてほしかった。    もうすぐ、中学最後の夏休みが始まる。  受験勉強に忙殺されることになる。  本郷に対する俺のそうした思いは、結局のところ雑念でしかない。  会って話して、雑念を絶つ。  最終的に俺は、そういうふうに理由をつけた。  次の日曜。  前回と同じ池袋。  そう話をつけた。                  
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