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目をぱちくりとさせながらも美歩は雪斗に腕を引かれて、歩いていく。これはさすがに美歩にも雪斗の好意は伝わったはずだ。
辺りが騒然となり、みんなが美歩と雪斗のことを見ている。
ちらりと海くんの姿を確認すると、彼だけは私のことを見つめていた。
そのことが擽ったくて、でも嬉しくて。口元が緩んでしまう。
「町田さん」
末永くんに名前を呼ばれて、慌てて表情を引き締めて振り向く。
「〝気になる人〟って言ってたけど、もう俺にはつけ入る隙なさそうだね。残念」
「え?」
「でも最後にこれくらいいいかな」
「っ!?」
末永くんの顔が近づいてきたかと思えば、そっと耳打ちされる。
「今日はありがとう」
驚いて硬直していると、背後から誰かに抱きつかれるようにして引き寄せられた。
「ふゆ」
私を呼ぶ甘い声に、心臓が騒ぎ出す。
「帰るよ」
「う、うん」
末永くんと久保くんに別れを告げて、海くんに手を引かれながら歩き出す。
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