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何故か海くんは美歩と雪斗が向かった出口とは別の方から外へ出た。
理由を聞いてみると、鉢合わせたら嫌じゃん?と言われて、なるほどと頷く。兄と親友のいちゃいちゃを見る勇気はちょっとない。
「それにみんなの視線が雪斗たちにむいている間に逃げちゃいたかったし」
雪斗と美歩に視線が集中したため、おそらく私と海くんが一緒に出て行ったことを見ていた人は少ないはずだ。
「で、ふゆ。さっきなにされたー?」
「えっ」
「すっごく近かったよねー?」
夜道を歩きながら、掴まれていた手が指一本ずつゆっくりと絡んでいく。
たったそれだけのことなのに、甘く痺れるような動作に息を飲む。
「今日はありがとうって言われただけだよ」
「ふーん?」
海くんが怒っているのか暗くてよくわからない。
でも繋いだ手がしっかりと握られていて、私もぎゅっと握り返す。
「あーもー……心狭くて嫌になる」
繋いだ手を海くんが持ち上げると、口元に近づけて軽く押し当てた。
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