恋をするなら彼ら以外

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*** 「lemonの今月号見た!?」 「見た見た! この服、可愛いよね!」 同じクラスの女友達と雑誌を見て、ファッションやメイク、好きな漫画についてお喋りをする。それが私にとって欲しくてたまらない学校生活だった。 そんな最高に平和な高校生活をスタートできて、毎日が楽しくてたまらない。 ————ただ一つを除いて。 「ねー、大崎くんめちゃくちゃカッコイイー!」 「わかるー! 昨日のドラマでもカッコよかった!」 興奮気味に話している友達に相槌を打ちながら、顔を引きつらせないように気をつけた。 雑誌に載っている今注目の若手俳優は爽やか系で目鼻立ちがはっきりとしている。 彼のキャッチコピーには〝国宝級・正統派イケメン〟と書かれていた。 私にはとてつもなく胡散臭く見えてしまう。 「性格もすっごい良さそう」 「わかる〜! 優しそうだもん」 高校に入学して一週間。 せっかくできた友達にいきなり「イケメンなんかに騙されないで!!」なんて言えるはずもなく、笑ってごまかす。 「あ!」 雑誌の次のページを捲ると、芸能人の特集ページが終わって読モの着回しコーデ特集が始まった。 見覚えのある男子高校生たちに思わず「ひっ!」と声をあげそうになるのを、ぐっと抑える。 そういえばこの雑誌だったっけ。 「やば! 雪斗くん可愛すぎ! 萌え袖最高!」 上目遣いをしたあざとい表情で袖の長いシャツを着ている男子を見下ろす。 〝女はコレが嬉しいんだろ?〟とか言って、下衆な笑い方してましたよ、その男。 「いやいや、こっちの海くんでしょ! 大人の男って感じでかっこいい!」 ベンチに座り、かっこつけて足を組みながら本を読んでいる男子の姿。 この人、読書が大の苦手で読書感想文を私に書かせてたし、四コマ漫画しか読まないいじめっこですよ。おまけに女にだらしないし。 「えー、ルカくんもよくない? 紳士で憧れの王子様って感じ!」 女子の手をとってエスコートしている金髪碧眼の男子。 大の虫好きで、笑顔でバッタを持ちながら嫌がる私を追い回してくるような男ですよ。 イケメン=性格もかっこいいなんて幻想だ。 ちやほやされて優遇されてきたイケメンたちは、とんでもなく残念な男たちになってしまっている。
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