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柔らかくて温かい感覚に心臓が大きく跳ね上がる。
「……そういう顔、他の男の前で見せないよーに」
そういう顔ってどんな顔?と眉を寄せると、海くんが吹き出した。
「まあ、でもふゆが鈍感でよかった面もあるけどねー」
「それどういう意味?」
「かわいいってことー」
さらりと言われてしまい、恥ずかしさのあまり俯きたくなる。そんなタイミングで駐輪場へつき、海くんは私にヘルメットを手渡してくる。
海くんのバイクの後ろに乗ると、ぎゅっと抱きつく。こんなに海くんの背中って大きかったっけ。
「……ふゆー、俺のこと試してる?」
「試す?」
「あーもー……そのまま掴まってて」
ゆるやかな風が吹く夜道を海くんのバイクで走っていく。風が心地良くて、熱い頬が冷まされる。
〝冬菜ってもう海くんのこと好きだよね?〟
〝大丈夫だよ。きっとすぐにわかるはずだから〟
海くんの背中に抱きついて優しい体温を感じながら、美歩の言葉が心にすっと落ちてくる。
そっか。私、もう海くんのことを好きになっていたんだ。
「海くん、好き」
呟いた私の声は、バイクの音に掻き消されて海くんには届かなかった。
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