恋した相手は、

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キスをされるかと思うくらいの距離で、一瞬止まると海くんは私の頬に唇をそっと押し当てた。 「へっ」 「なーに? もしかしてふゆ、期待した?」 「っ、期待って!」 ニヤリと笑った海くんはいつも通りで、キスされると思って身構えた自分が恥ずかしくなってくる。 だ、だってあの距離で近づいてきたら誤解するよね!? 笑っていた海くんが少し困ったような切なげな眼差しを向けると、私と自分の額をこつんとくっつけた。 「本当はしたいよ」 「え……?」 「でも大事にしたいから、今はこれで我慢する。遅くなる前に帰ろ」 私から離れて海くんがヘルメットを手にする。その後ろ姿を眺めながら、私は両手で頬を覆った。 もっと触れたい。傍にいたいだなんて、欲がじわりとせり上がってくる。 ……私の方が我慢できなくなったらどうしよう。
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