恋をするなら彼ら以外

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……学校にいるときくらいあの人たちのこと忘れたかったのに。 ため息をつき、自分の席に着いた。 右隣が埋まっていることに気づき、とっさに振り向く。そこにはマスクをしてメガネをかけている男の子の姿。 この人が末永くんなんだ。初めて見た。 入学してすぐに席替えをして、私は窓側の一番後ろの席になった。右隣の席の末永くんは風邪でずっと休みで空席だったのだ。 「隣の席の町田です。よろしくね」 「……末永です。よろしく」 少し掠れた声で末永くんが答えた。一週間も休んでいたってことは相当具合悪かったのかな。 私だったら一週間も家にいたら逆に体調悪化しそう。毎日あの人らがお見舞いという名の嫌がらせをしにくるに決まってる。 「体調は大丈夫?」 「まだちょっと喉が痛いけど、平気」 「そっか」 マスクとメガネで顔はよく見えないけれど、末永くんはおとなしそうな人だ。隣の人が落ち着いている人でよかった。 ルーズリーフをまとめたファイルを取り出して、ちらりと末永くんを見る。 入学したばかりとはいっても一週間も学校休んでたし、授業内容知らないと困るよね。 「あの、これ……よかったら一週間分の授業内容、写す?」
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