恋をするなら彼ら以外

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学校が終わり、家に帰ると玄関に男サイズのローファーが三足並んでいて、げんなりとする。 ……また今日も来てる。 リビングのドアを開けると我が家のようにくつろいでいる男子高校生二人と、足を組んで偉そうに雑誌を見ている兄がいた。 「……ただいま」 〝おかえり〟と返すことなく、兄の雪斗が雑誌をこちらに向けてくる。 「ほら、発売してんぞ」 「はいはい、学校で友達が見てたから知ってるよ」 「お前用に一冊やる」 はあっとため息を漏らして、雪斗の前を素通りする。見たって普段の雪斗と違いすぎて呆れるだけだ。 写真の中だとキラッキラな笑顔だけど、家だと性悪でふんぞり返って偉そうにしている。それが雪斗の正体だ。 カバンを置いて手を洗いに行くと、騒いでいる雪斗たちの声が聞こえてくる。 「この雪斗、あざとい顔してるよなー」 「こういうのがウケるんだろ」 「騙されちゃう女の子かわいそう」 ……聞きたくない男たちの本音トーク。 雪斗は高二にしては童顔で中性的な顔立ちだからか、可愛いと言われて年上からちやほやされてきた。 最近では少し大人っぽくなってきたため年下からもじわじわと人気を集めているらしい。 ……って自分で言っていた。雑誌のアンケートでもかなり票を集めているのだとか。 幼い頃からこの顔と大人を騙すほどの演技力で周囲の人たちから甘やかされてきた。 だからこうなってしまったわけですよ、私の兄は。
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