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わたしの表情が怒りで引き攣るのに気付いた達也は、あっさりと前言を翻した。
「あー、ごめん。嘘、嘘、嘘。嘘です。冗談です。冗談」
その言葉が、また、わたしの怒りに火を注いでいることに、こいつは気付いているのだろうか?いや、気付いていまい。
「いいよ。付き合っても」
わたしは達也に言い放ってやった。
「え!いいの?本当?」
達也が嬉しそうに目を輝かせる。
「えーえー、いいですとも。あんたのそのいい加減なところを叩き直すまでの間だけどね」
「げっ」
わたしの冷やかな言葉に、達也の笑みが凍りつく。
「なんか思い出した。咲良、怒ると無茶苦茶怖えの」
達也は真顔になって呟いた。
「えーえー、そうですよ。こんなわたしなんかと、付き合ってくれる人なんていませんよ。悪かったわね」
何だか虚しくなって、わたしは達也からプイッと目を逸らした。どうせ、あんたもそうなんでしょ。
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