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 クッ、ククククク。  達也が、そんなわたしを見て、声を押し殺して笑った。 「何笑ってんのよ」  わたしが頬を膨らませて抗議すると、 「いや、拗ねてるとこ、可愛いな、と思って」  達也は微笑みながら、わたしの目をじっと見つめた。 「何なの、それ」  わたしは両頬にあり得ない熱を感じながら、呟くように言った。  あーあ。全くなぁ。  まあ、だけど、本当に不良をやめてくれるなら……  わたしは、そんなことを少しだけ、ほんの少しだけ、心の奥底で思い始めた。  空を見上げると、空にはもう、雲は一つも残っていかった。高く澄み渡った青空が遠くまで広がっている。  雨はもう完全に上がった。  おしまい    
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