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 小学生の頃、家が近くにあったわたし達は、毎日のように一緒に並んで歩いて帰った。  その時のことを思い出した。  帰り道、近くの原っぱに寄り道をして、花を摘んだり、駆け回ったりして一緒に遊んだ。 「懐かしいね」  追いついて、隣りに並んで歩く達也に、わたしは笑って話し掛けた。  しかし、達也は低い声で「ああ」、と言ったきり、うんともすんとも話さなくなった。 「ちょっとぉ……」  わたしが文句を言おうとしたその時、 「あのさ!俺、不良、やめるからさ、俺と付き合ってよ」  達也に突然、告白されてしまった。  ええー。あんた、それはないでしょう。  だってさ、さっき久し振りに会ったばかりだよ。  さっき、わたしに会うまで、わたしのことなんか、頭になかったよね。そうだよね。  なのに付き合おうって?  てめー、幼なじみを舐めんなよ!  その間、零点五秒。わたしの頭の中を、不良のような言葉が走り抜けた。
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