冬季休暇

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冬季休暇

仮装パーティーにて、王子ヴィクトリオが公認恋人宣言をしてから、特に変わったこともなく。ヴィクトリオは相変わらずユリアンとイチャイチャしているが、俺はルカたんとラブラブなので特にどうとも思わない。 そんな風にして過ごした学園生活は、ついに冬季休暇を迎えた。 冬季休暇と言うことで、今年はルカたんがウチにお泊りに来ている。俺に1日たりとも会えなかったら嫌だとか、きゅんときてしまうっ!!ぎゃふっ。 「る、ルカたん。実はプレゼントがあって」 「ん?何だろうな」 何だかにやにやしているルカたん。ま、まさか気が付いて!? いや、しかし、ルカたんの前ではなるべく隠していたのだが。俺はとある包みを取り出した。 「これ、あげる」 「うん、ありがとう」 そう言って、早速包みを開けてくれるルカたん。 「これは」 「あの、マフラー。編んだから」 アイスブルーに近い水色の毛糸を使って編んだ特製マフラーである。えへへ。 前世だと手編みのマフラーのプレゼントは意見が分かれるところだけど、マフラー編み機のないこの世界では手編みが主流。重い、とかないはず!むしろルカたんならっ! 「あぁ、嬉しい。私のために頑張って編んでくれたのだな」 そう言って、俺の編んだマフラーを胸元に抱きしめてくれる。はぅあっ! 「今からずっと巻いていたい気分だ」 「いや、ここ室内だから」 外に出る時に是非。 そんなこんなで、ルカたんとの冬季休暇がスタートした。 *** そして、ルカたんを招いての家族の晩餐である。 今日は俺も母さんと一緒に夕食作りを手伝った。貴族の家だから、料理人ももちろんいるのだが、母さんは料理好きでよくこうして夕食の品を何品か作っている。お菓子作りも上手だし。今年の冬季休暇はルカたんがお家に来ることになっていたので、俺もお手伝い。 俺の手料理を早速お披露目すれば。 「素晴らしいな。普段の弁当も美味しいが、こうして手料理を作ってもらえるとは。リュリュごと、食べたい」 ぐはっ。 か、家族の前なのに。 「ぐふっ」 ほら、俺の逆隣りに座ってるアンズが吹いたからっ!因みに席順はいつもの通り。俺たちの正面が父さんと母さんで、俺の左右にアンズとルカたんである。 「あ~ん、してくれるか?」 「ふぇ?」 「あら、いいじゃない。私もしよ~っと。ほら、ヒューゴさん」 因みにヒューゴはウチの父さんの名前。母さんの名前はナズナである。 「あぁ、ん、美味いな」 と、父さんっ!さすが!この状況で何の恥じらいもなく母さんからのあ~んに応じているっ!よし、お、俺もっ! 「はい、ルカたんあ~ん」 と、ルカたんの口元におかずを刺したフォークを差し出してみる。 「はむっ、んん、美味しぃ」 ルカたんも何の恥じらいもなく食べた――――っ! 「うん、さすがは閣下の息子だな」 「やだっ、ラブラブじゃない!いいわねっ!」 ウチの両親からも及第点をもらえた。 「がはっ」 俺の双子の妹のアンズさんからは腐ポイントをもらいましたー。――――って、何じゃそらっ! 「こういう晩餐もなかなかいいな」 「ルカたんのお家だって」 あんなにご両親は仲良さげだし。 「基本的に父上は忙しいからな」 あ、そっか。宰相閣下でしかも公爵だもんね。 「まぁ、定時には帰しているがな」 と、父さん。何となくこき使ってる感が否めない。いや、定時に帰してくれてるんなら、こき使ってるというか気を遣っているのか?まぁ、父さんもできるだけ夕飯に間に合うように帰ってくるし。 「えぇ、おかげさまで何もなければ早めに帰ってきますよ。だから、家族3人で夕餉を囲めることも増えました」 「前は違ったの?」 何となく、そう聞こえる。 「私が宰相補佐に配属される前は、結構ブラックだったからな」 ぐはっ。 父さんが宰相補佐に抜擢されたのには、そう言う背景もあったのだろうか。 父さんは元々城仕えで、他の部署にいたのだとか。そんな中で今の宰相閣下・お義父さんに抜擢されて補佐になったのだという。 とにかく、父さんがいてくれて良かったのかなぁ。ルカたんもなんとなく嬉しそうな表情をしているもの。 そんな様子に俺も自然と笑みがこぼれたのだった。
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