新年

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新年

新年と言えば、当然王国でも王城で祝賀会が開かれる。これに貴族は参加必須なのである。もちろん俺とアンズもだ。以前は双子コスを着せられる羞恥プレイだったのだが。 今年はルカたんがいるのでお揃いデザインのスーツである。今回の俺のスーツはダークレッド。ルカたんはアイスブルーのスーツを身に纏っている。 そしてお互いの髪の色の宝石をあしらった耳飾りを付けている。俺がインディゴブルーで、ルカたんが白く輝くプラチナホワイトの珍しい宝石だ。うむ。眼福なりや。 両親たちに続いて、ルカたんにエスコートされて入場である。アンズは驚いたことにアーサーと入場するらしい。まぁ、お互い婚約者がいないからちょうどいいらしい。 ちょっと離れた場所にいる2人に手を振りつつ、両親に付いて国王陛下夫妻に挨拶を終えた俺たちはというと。 「んんっ、やっぱり王城スイーツ、最高!」 以前は王子ヴィクトリオの視線が嫌であんまり味わえなかったけれど、学園で公認の恋人宣言をしたことは国王陛下夫妻にも知れ渡り、さすがに新年の祝賀会になど参加すれば醜聞の的。本日はユリアンとともに出禁を言い渡されたらしい。噂によればブルーローズ伯爵も締め出されたとかなんだとか。まぁ、息子が婚約者がいる王子の恋人になって、ごく普通に来られる神経はすごいけどな。 「ふふっ、リュリュは本当に食い意地がっ。くっ」 「ルカたんったら笑いすぎー、ほら、あ~んしてあげないぞっ」 「すまない。あまりにもかわいかったから。あ~んはしてくれないか?」 「しょうがないなー」 あ~ん、とルカたんにスイーツをつまんで差し出せば。 「ん、美味しい。やっぱりリュリュがあ~んしてくれるからかな」 「る、ルカたんったら。シェフの腕がいいだけだって」 「リュリュがあ~んしてくれることに意味がある」 ぐはっ。そないに言われたら悶絶しそうになるやんけ。 そんな時だった。何だか会場がざわざわしている?いや、元々ひとはたくさんいるからざわざわはしているのだが。 いつにもましてざわめきだっているような感じ。そしてそのざわめきはどんどん近づいて来て、とある人物が俺たちの前に現われたことで、その原因がわかった。 ミルクティー色の髪に、アッシュモーヴの瞳。よく似た顔立ちの人物を知っているが、瞳の色が違う。このひとはある意味有名なのだ。主に、“双子の兄”のせいで。 「やぁ、久しぶりだね。ルーカス」 今更だが、ルーカスはルカたんの本名である。 「何故、お前がここに?」 ルカたんの目は……冷めてる~~。 「何故、とはひどいな。祖国の祝いの席だ。出席するのは当然……と言いたいところだけれど。留学先から急遽呼び戻されてしまった。冬季休暇明けから、学園に復帰するんだ。その時はまた仲良くしてほしいな」 「確かに、急だな」 その通り、目の前のお方は今まで留学していたのだ。本来ならば1~2年生の2年間だったはず。それなのに新年の祝いの席だとは言えこちらに帰国しているとは。 まぁ、俺はほとんど接点がなかったのだが、知ってはいる。だってヴィクトリオと目の色が違うだけで同じ顔だし、更に同じく双子だし。 双子の王子の方は俺とアンズのように仲良さげには見えなかったというのが本音なのだが。 「ははは、だろう?父上に文句のひとつも言いたくなるよ」 と、苦笑する第2王子殿下。 陛下に文句って。大胆なひとだなー。ま、父子だからこそ、なのかもだけどね。 「そちらは?噂の婚約者殿かな?」 じっと、アッシュモーヴの瞳が俺を見据える。瞳の色は違うし、人柄も違うのだろうけど。やっぱりあんまり見られたくないなぁ。そんな気持ちの表れか、そっとルカたんに寄り添えば、ルカたんが察したのかぎゅっと俺を抱き寄せてくれる。 「あぁ。この通り、私にべた惚れなので、妙な視線を向けないでくれ」 「べた惚れかぁ、羨ましいな。でも、妙な視線って何だい」 ははは、と苦笑する表情は、ヴィクトリオとは全く違うな。これぞ双子の個性!大事だよ?ここ。 「でも、兄上が君にたいそうな迷惑を掛けたと聞いている。私の顔など見ては不快だろう」 「あ、いえ。双子とは言え個々の別の人間でしょう?」 「……っ、そうだね」 俺の言葉に、第2王子殿下が苦笑する。 「そう言えば、君も双子なのだってね。王城のパーティーでは君たち双子はいつも仲良さげで羨ましかったよ」 と、どこか寂しそうに第2王子殿下が吐露する。 「いえ、双子も双子それぞれ。いろんな双子がいるので。殿下は殿下。それでよいのでは?」 まぁ、知り合いの双子には俺たちが仲良すぎと言われるほどなので。 「そうだね。そうかもしれない。君はとても不思議な子だ」 え?俺が?そうかな? 「殿下。もうよろしいでしょうか」 そう、告げたルカたんの言葉は妙に冷めていた。 「そうだね。これ以上君の婚約者殿との会話を独占すれば、君の逆鱗に触れそうだ。嫉妬も、ほどほどにね」 そう言って苦笑しながら、第2王子殿下は去って行った。
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