【side:ルカ②】昔話

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【side:ルカ②】昔話

――――Side:ルカ 『ひそひそひそ』 『奥さん、聞きました?』 『えぇ、遂に自宅に連れ込んだって』 『『『ひゅー、やるぅー』』』 「それは、一応ちびリューリューず公認ととってもよいのか?」 かわいらしいちびリューリューずたちが枕元に現われ、ひそひそとかわいらしい声で会話しているのを察知し、隣に眠るリュリュを抱きしめて寝顔を堪能していたルカは彼らを見やる。 『あ、ルカたんだー』 『おっけーい』 『特別やで』 「そうか、光栄だな」 ふふっと、ルカはリュリュが見たら一発で『はぅあっ』となりそうな妖艶な微笑を口元に浮かべる。 『ねぇねぇ、どしてリュリュたん大好きなん?』 『そこら辺、聞いとかんと』 『寝られへん』 「それは一大事だな。ふむ。まぁ、いい機会だ。聞いてくれ」 3匹のそんなかわいらしいおねだりに、ルカはやれやれと言いながらも承諾した。 『『『がってんでーいっ!』』』 ――――10年ほど前【Side:ルカ】 それは、王城でのお茶会の日だった。その日は貴族の子女やその親たちが集まるお茶会だった。しかし、私は公爵家目当てで擦り寄ってくる大人たちや私の機嫌を取りたがる令息・令嬢たちに子どもながらに心底飽き飽きして、こっそり茶会を抜け出していた。 そんな時、王城の庭園の一郭に見事なバラ園を見つけたのだ。ローズレッド、桃色、白、淡い黄色、様々なバラの花が咲き誇っていた。 一番好きな花は家紋にもあしらわれたダークレッドの牡丹。だが、薔薇も嫌いではない。特に同じダークレッドなら。 私がその中の一輪にそっと指を伸ばせば。 ピシッ 「痛っ」 どうやら、バラからは拒まれてしまったらしい。適当に嘗めておけばいいかと思っていれば。 「お怪我したの?」 そこにいたのは、同い年くらいのとてもかわいい子だった。白い髪にアイスブルーの瞳。そして胸元に付けられた雪牡丹をあしらった家紋。 私の家とお揃いだ。……そう、感じた。 そして、ドキドキと脈打つこの鼓動は一体? その子は私が怪我をした指をそっと両手で包み込むと、そっと目を閉じた。そして指からゆっくりと温まっていく不思議な光の感覚と共に、癒えて元通りになった指先。 「えへへ、これでだいじょぶ!」 そう、屈託なく笑うその子に、私は酷く惹き付けられた。この感情の名を知るのはずっとずっと後。けれどその出会いは、私の中で忘れられぬものになった。 その後その子はリュリュと呼ばれ、母親と思われる女性と共にその場を後にしたが。私はその後母が探しに来て見つけてくれるまで、その去って行った方向をずっとずっと、見つめていた。 ―――― 「これが、リュリュとの出会いだ。その日から、雪牡丹が私の中の一番になった。もちろん他の牡丹も好きだがな」 ルカの言葉に、ちびリューリューずは『わあぁぁ』っと歓声を上げる。リュリュとの出会いと、そして牡丹が好きという点が評価されたらしい。 『一目惚れやんけ』 『ひゅーひゅー』 『きゅんときたー』 「ふふっ、気に入ってくれたか?そうだな。その時、リュリュに一目惚れしたのだ。そしてその治癒増幅スキルを持ち、更には好感度によって発動するかどうか、質が変わるということを聞いて、嬉しかった。リュリュは私に好感を持ってくれたのだと。その後は機会があればずっとリュリュを見てきた」 『おっふぅ』 『リュリュたんが知ったら発狂もんやんなぁ』 『きゅんきゅんでれでれやんなぁ』 「ふふっ、それは光栄だな」 そしてルカは隣ですやすやと眠るリュリュを抱き寄せ、幸せそうに自身も眠りに落ちていくのだった。 その様子を、ちびリューリューずはしげしげと見つめているのであった。
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