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隣国からの客人
その日、俺たちいつものメンバーに激震が走った。
「……ルビーナ王国からの使節団?」
「そうそう、昨夜着いたんだ」
そう教えてくれたのは、リーディアさまと一緒に来たハヤトさま。
「何故、貴様までここに来る」
ルカたんは相変わらず不満げだったけど。そんなルカたんもかわいい。
ちゅっ。
はぅあっ、ちゅーされちゃった。
「君たちがラブラブすぎて……」
あ、すんません。ハヤトさまは見慣れてないから。
「慣れればなんぼよ」
「そうっすよ。じゃなきゃルカたんがもっと荒れますからね」
と、アンズとアーサー。いや、ルカたんが荒れるってオイ。ヤキモチ?くいっと首を傾げてみれば。
「かわいい、リュリュ」
ぎゅむっと抱きしめられた。
「さり気にリーディアさまのことはスルーなのがルカさまだよね」
こら、ゼナったら。そう言うのはしーっ。
ルカたんも頷かないの!いや、リーディアさまは確かにウェルカムだけど、ハヤトさまだって仲間に入れてあげないとかわいそうでしょうが。ヴィクトリオと違ってまともみたいだし。
「全く君らは父子揃って。まぁ、それはいい。重要なのはここからだよ」
「重要なこと、ですか?」
「その使節団には、ぼくが留学先で世話になったルチアーノ殿下も代表として来ているんだ」
ハヤトさまはルビーナ王国に留学していたのか。貴族なのに碌に知らなかった俺。あははー。
「ただ、ね」
何かあったのかな?
「秘密裏に、ルビーナ王国のエレーナ王女が付いて来てしまったんだ」
「その、エレーナ王女って?」
「あぁ、彼女はね」
その、時だった。
「あっ!ハヤトさまぁ~~~~っ!」
お花畑が背景に浮かんでいるような声に、ハヤトさまの表情が渋くなる。
やって来たのは、プラチナピンクの髪を頭の高い位置でツインテールにした美少女で、瞳は金色である。庇護欲をそそる系な彼女は、一目散にハヤトさまの元に駆け寄ってきたのだが。
「え、何あの方、イケメン!」
いきなりルカたんの方を見た?
「あの方は、あの方が私の運命のお方なのだわ!」
え?何言ってるの!?
「あなたは今日から私の運命のお方っ!今日から婚約者よ!」
そう言って、ルカたんの前に立って、手を差し伸べてきた。え、何言ってんの?
「あ゛?」
ルカたんの纏う空気がマイナス30度――――っ!!
「どぉしてそんな恐い顔してるの?あ、わかった!エレーナの顔がかわいすぎるから?でしょ?うっふふっ!」
みんな彼女の言動に呆然としていたのだが、彼女の後ろから腕がにょきっと伸びてきて、彼女は回収されてしまった。彼女を回収したのは、金髪に金色の瞳を持つ青年だった。
「エレナ!!ここで何をしているんだ!」
エレーナ王女を愛称で呼んで、しかもタメ?この方は一体。
「あんっ、お兄さまったら!私、運命のお方を見つけたの!この方よ!私の婚約者なの!」
「ルチアーノ」
「あぁ、ハヤト。済まないな。何があった」
「そちらの王女殿下が、ぼくの幼馴染みを勝手に婚約者だと言い始めたんだ。因みに彼の隣にいるのが婚約者のリュリュくんで、2人は相思相愛なんだが」
「はぁ、何てことを」
と、ルチアーノ、いやルチアーノ殿下は溜息をつく。つまりはハヤトさまがルビーナ王国で世話になっていたという王子殿下か。
「は?婚約者?男じゃない!」
そうだけど、孕み腹だし。孕み腹じゃなくてもこの世界は基本同性婚OKである。文句を言われる筋合いはないし、俺たちの婚約は国が認めたことなのだから、他国の王女にどうこう言われる筋合いはないのだけど。
「だから何だというのだ。他国の婚約事情に首を突っ込むな!」
「ひっ」
ルチアーノ殿下の言葉に、エレーナ王女がびくつく。
「済まなかった。私が学園の視察などを希望したばかりに、こやつまで紛れ込んでしまって」
「いやいや、それはルビーナ王国にとっても必要なことだから。だけどその彼女は学園として入校は許可しないよね?」
「その通り、許可は出ていない。すぐに私たちは撤収しよう。謝罪は後程」
「あぁ、任せたよ」
ハヤトさまがそう答えると、ルチアーノ殿下は騒ぐエレーナ王女を連れてその場を後にした。
「つまりはめちゃくちゃ思い込みの激しい王女がくっついてきちゃったわけだ。ぼくも留学中は勝手に婚約者だと言いふらされて被害を受けた」
あぁ、そう言うことだったか。ハヤトさまもご愁傷さまだが。
「ルカたんは、俺の婚約者なのに」
「当たり前だ、リュリュ」
ちょっと不安に感じたのだが、ルカたんがぎゅっと抱きしめてくれたからちょっと安心した俺であった。
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