ツインテールの矜持

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ツインテールの矜持

――――それは、馬車でアンズと一緒に伯爵邸に帰って来た時のことだった。 屋敷の中へ入ろうとすれば。 『何か来るで』 え?ひょこっと俺のポッケから顔を出したぽーたん。そんなところにいたの?新しい登場スタイル?――――って、それどころじゃなっ。 カキン、キーンッッ。 おぅ、見事な氷像カーニバル? 「何かしら、あれ」 その氷像の作成主がおおっと見上げていた。 俺たちに襲い掛かろうとしている?黒い影さんたちと……おぅ、ピンクツインテールがいたぁっ! 「いや、あれはどこからどう見てもエレーナ王女だろう」 「何でウチに……あ、リュリュが目当て?」 「何で俺ぇっ!?」 「ほら、あの子思い込み激しいんでしょ?ルカさまの婚約者のリュリュを脅すか、亡き者にするかすれば、お邪魔虫がいなくなるとか思っても不思議じゃないわ」 「うわっ、亡き者とか恐いっ」 『ぶるぶるるっ』 おや、またちびリューリューず。今度はアンズの肩の上にちょこんと乗っかったぬんたん。アンズのツインテールを結っている髪紐にあしらわれた牡丹の陰からひょこっと顔を覗かせている。 『あのツイテは、ツイテに非ず』 次に現われたのはヤチヨたん。ぬんたんとは反対側のアンズの肩にちょこんと乗り、牡丹飾りの陰からまたまた顔をひょこっと覗かせている。 そこ、好きなの? 「全くだわ。あれでツイテを決めるとか、ツイテなめてるのかしら」 そこじゃないと思うんだけど。 アンズのツイテに比べたら、ツイテレベルも相当低いだろう。いや、何だツイテレベルって。 ーツインテールを極め、愛するもののレベルよー と、アンズから無言の圧が掛かった。マジでか。 そして何だ何だと伯爵邸からもひとが出てきて、母さんもその様子にはびっくりしていた。 「あの子、すごい顔ね」 と、ヤバい顔して襲い掛かろうとしていたが氷漬けにされてその表情が一時停止しているエレーナ王女に顔を向ける。いや、そこかいっ!さすがは母娘。着眼点が独特っ!! 「通報しよっか」 との俺のひと言で、とりま城にいるであろう宰相補佐の父さんに連絡すれば、父さんが宰相閣下、そしてルカたんと一緒に来てくれた。周りには魔法師団、騎士団の団員たちもおり唖然としていた。 「ふむ、このまま彼女らの国に連れていけないものか」 と、宰相閣下ことお義父さん。さすがはルカたん父。こっちも着眼点が違ったぁっ!! 「てかこの氷、溶かしますか。閣下ー」 魔法師団員のひとがそう叫ぶ。 「いや、溶かしたら暴れるだろ」 と、お義父さんこと宰相閣下。 「細かく裁断して、持って行けばいい」 と、ルカたんが言えば、氷の塊に手をかざす。 「うっかり肉まで切らないように注意しなくては」 えええぇぇぇっ!?ちょまっ、こ、恐いんだけどーっ! 「王女あたり、やってしまうかもしれない」 ヤメテ――――。何かやばめな王女さまだけど、一応王女だからね!?他国の王女だからね、残念な感じだったけどもっ! 「慎重に、あぁでも爪くらいならいいかもしれんな」 と、お義父さん。 いや、よくないよくない! 「ツイテは切除してください」 と、アンズ。 「いや、もう凍ってダメになってるかも。凍ってもげたことにすれば気付かれませんて」 いや、アンズ!?それはいいの!?ありなのぉっ!? 「よし、ではいざ」 待ってぇ――――っ!?本気でやんの!? 「ちょ、ルカたっ」 ルカたんを止めようと手を伸ばした時だった。 ガキン。ガキン。 どさどさどさ――――。 あ、氷の切断が終わった。王女はどうなって、――――あ、ツイテだけが氷の塊に別途まとめられていた。 「ふんっ、そのような歪んだ心でツイテを保てると思うなよ」 と、アンズ。アンズさん、何かかっけぇ。でも、ツイテってそうなの!? 「では、運べ」 『うぇい~っす』 そうして、伯爵邸に不法に侵入及び伯爵子女に襲い掛かろうとした不届きものたちは氷の塊(個々に分断済み)のまま王城へ運ばれ、しかるべき場所で解凍されるそうだ。 「リュリュ、今夜は私もこちらに泊まるから、安心して」 ルカたんが俺をぎゅっと抱きしめてくれる。ルカたんったら、王女は氷漬けなのだから大丈夫なのに。そう思いつつも、ルカたんの温かい心遣いに甘えることにしたのだった。
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