その後

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その後

顔をこわばらせるユリアンに対して、ハリカ嬢の容赦のない言葉が飛ぶ。 「あんた、自分が都合悪くなったらすぐそうやって泣くけど、涙出てたことないよね。あと、リーディアさまがそんな子どもみたいなまねするわけないじゃない?あんたアホなの?」 「貴様、何様だ!私のユリアンに向かって!」 「はんっ、そんなことも知らないの?王子殿下が?アンタたち、ある意味お似合いよ!」 わぁ、容赦ない。女の子っていざという時、強いよね。ウチのアンズさんもそうー。 「何だと!?」 怒ったヴィクトリオがハリカ嬢の前にずかずかと出ようとすれば、そこですっとリーディアさまが立ち上がり、ハリカ嬢の前に躍り出る。 「王子殿下ともあろう方が、淑女に暴力でも振るうおつもりですか?あと、先ほどの件ですが、その虚言を改めないのであれば、わたくしへの侮辱ととります」 「んなっ!?ふざけるな!」 「ふざけているのは兄上でしょ」 「貴様は凝りもせず」 と、呆れたような声が響いたと思えば。ルカたんとリーディアさまの婚約者であるハヤトさまが来ていた。 「んなっ、ハヤト!?」 「いくら王子とは言え責任者の許可なくここに入ることは許されないよ。それがマナーだからね」 ここでいう責任者とはサークルの会長であるリーディアさまだ。 「だが、ユリアンはリーディアに虐められてっ!」 「なら、証拠を集めてくることだ。その虚言癖の尽きない伯爵令息の口以外のね。そうでないのならばぼくの婚約者への侮辱とみなす」 「うっ、虚言癖とは何だ!それこそ侮辱だ!」 「これに関しては証拠がある。王城の教師たちからの訴え、そして仕事が終わったと言われて確認してみれば、内容を何も見ずに書類にサインしているだけ。もっと色々と証拠も証言もあるよ?そろそろ心を入れ替えたらどうかな?じゃなきゃ君ら、本当に破滅するよ」 「んなぁっ、王太子の私に言っていいことと悪いことがあるぞ!」 「なら、父上にそう訴えたら?」 「ふんっ、望むところだ!」 そう言って、ヴィクトリオはぷんぷんしながらユリアンと教室を後にしてしまった。 「よろしいんですの?」 と、リーディアさまがハヤトさまに問う。 「ははは、大丈夫。ぼくもただそう言ったわけじゃないから。そのうちわかる」 そう言ってケラケラとハヤトさまが笑う。 「それに、そちらはブルーローズ伯爵令嬢か」 ルカたんが俺の隣に来てくれて、腰を抱き寄せながら問うてくる。本当にスキンシップが好きなんだから~。まぁ、そこもかわいいからいいんだけど。 「そうだよ」 「彼女はなかなか見どころがあります」 「よろしくお願いいたします」 淑女の礼もお見事である。 「ははは、ちょうど彼女にも話を聞きたかったんだ。伯爵家の領地経営とか、資金運営っぷりについてね。伯爵に聞いても問題ないの一点張り。その証拠を見せろと言ったらすぐには用意できないと言ってずいぶん経つ」 「まぁ、それはそうです。必要なものは彼らの手の届かないところにあります。じゃないと勝手に好き勝手されてしまいますもの」 「そうだろうね。ではその関連書類を頼めるかな?」 「えぇ、もちろんです。寮にありますので今からどうぞ」 「寮?」 ユリアンは王都の自宅から通っているらしい。それなのにハリカ嬢は寮に入っている?まぁ、相当いづらい家なのだろうなぁ。 「えぇ、仕事は寮に持ち込んでおりますから。あの家にあるのは醜い人間の欲と金品だけですよ」 そう言ってハリカ嬢はにっこりと微笑むのだった。 *** その後、なんと驚くことに、ブルーローズ伯爵は職務を怠ったとして爵位を没収された。現在の臨時伯爵はハリカ嬢で、将来はハリカ嬢と結婚したものに爵位が与えられる。また、彼女は現在学生の身なので、当分は国に領地を返還する形で経営を代行してくれることになった。そしてハリカ嬢が学園を卒業したら領地が再び返されるそうだ。 臨時伯爵になったハリカ嬢は父親と後妻を伯爵家から追放。ユリアンに関しては王子の婚約者である以上、温情で籍に残したそうだが、屋敷からその中にある金品全て、ハリカ嬢はまとめてうっぱらってしまったためにユリアンは無一文となり、今はヴィクトリオの元に身を寄せているらしい。 当然、ユリアンはハリカ嬢に抗議したそうだが、その後見人にはハイドレインジア公爵家がついたため、いとも簡単に追い返された上にこれ以上必要以上に接触すれば今度こそ伯爵家から追いだすとハリカ嬢に言われてそそくさと退散していった。 ヴィクトリオがその件で騒いだため、陛下によって再び謹慎させられて、ユリアンの隣にヴィクトリオと言う歩く権力がいないことが一番の理由だろう。 はぁ、あの王子。どんだけ謹慎するんだ?もう、10年くらい卒業できなさそうだなぁと思った俺であった。
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