王都デート

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王都デート

――――季節は秋。 ヴィクトリオはまだ帰ってこない。学園が、平和だ。 一方でユリアンは新たな恋人を作っている。しかも一人じゃないとか何とか。王太子妃教育には完全にいかなくなったらしい。 それでも毎日ヴィクトリオの元へは帰っているらしい。そこしか行くあてないもんね。 まぁ、今年もいろいろあったけれど今日は、ルカたんとの王都デートです!わぁーい。 「ふふ、本当に嬉しそうだな」 と、ルカたんが俺の肩に手を回して優しく微笑んでくれる。はうあぁぁっ! 「うんっ、だってルカたんとのお出かけだもん!あと期間限定モンブラン!」 「私よりも、モンブランか?」 ぎゃふっ、ルカたん萌え――――。 「一番はルカたんだよ?それに、ルカたんと一緒だから嬉しいんだよ」 「それなら、いい」 ルカたんがそう言い終わると、思わず互いに苦笑が漏れる。 ふふっ、こんなに平和なの久しぶりー。最近は色々あった。隣国の王女の襲撃とか、刺繍サークルへの襲撃とか。はぁ、襲撃ばかりでちょっと癒しが欲しかったところだ。 今日は思う存分ルカたんに癒されるのだー。 えへへー。 早速目当てのケーキ屋さんに着くと、モンブランと紅茶を2つずつ注文し、席に着く。 「結構端の方だけど、ルカたん良かったの?」 テラス席もあるのに。 「かわいいリュリュを大勢の人目に入れるのは、やはり嫌だ」 ぐはぁっ。 んもぅ、ルカたんったら過保護なんだから。 「俺は大丈夫だって。それよりルカたんの方がっ!」 周りにはひそひそとざわめき立つご令嬢たちがいる。いやまぁ、ケーキ屋さんだからね。令嬢たちが多いのだけど。それにしても奥のこの席の周辺に多いような。 『ねぇ、あのひとキレイ~』 『隣の子とのショットが萌え~』 『ぎゃふっ、眼福なり』 『素晴らしき萌えツーショット!』 あれ、ちょっと会話に耳を澄ませてみたんだけど。俺が想像しているのとちょっと違うような? 「あのぉ~、お隣いいですかぁ~?私たちも2人でぇ~」 え、何?いきなり俺たちの席の隣に女性2人組がやってきて、無理矢理椅子に座ろうとしてくる。しかもルカたんの方に2人!! 「ちょっ、私が隣よ!」 「ずる~~、い!私の方が先に目を付けたのに」 ひぇ――――。目を付けたとか何!? ー対象、邪魔者。排除!!ー 今、何故かアンズからのテレパス信号を受け取った気がするのだけど!? 「はいはい、お姉さんたちこっちねー」 「素直にこっち来ようねー」 何故か彼女たちは鍛えていそうな女性2人に連れていかれてしまった。 「あっ、ちょっ、イケメン~~!」 彼女たちは悔しがっていたが、女性2人に一喝される。 「坊ちゃまがせっかくリュリュさまと和んでいらっしゃるのにこの邪魔なメスブタが!」 「あの素晴らしき萌画を穢すな!!」 あれ、坊ちゃまって?ルカたんを見やれば。 「あぁ、もちろんせっかくのデートだ。護衛は付けている」 あぁ、公爵家の騎士さんたち?私服だからわからなかった。 「じゃぁ、周りも?」 あの子たちも? 「あれらは違う。だが、私とリュリュとの間を邪魔しようなどと言う不届きものはいない」 そうなの? 『どうなることかと思ったぁ~』 『この画は永久保存よ』 『邪魔するとかあり得ないしー』 『このカップリングの素晴らしさが分からないとか、あり得ないんですけど』 やっぱり、何かアンズっぽさをにじませている。な、何故!? 「リュリュ、私とのデートによそ見か?」 「あ、ごめんっ」 「貸しきりにすればよかったかな?」 「いや、さすがにそれは。他にも食べたいひとはいるだろうし。ほら。ルカたんあ~~ん」 こういう時は必殺あ~~ん作戦だ。 「はむっ、んん、まぁ、それで許そう」 「あはは~~、ありがと」 「それじゃぁリュリュもあ~んして」 「う、うん。はむっ、ん~~、やっぱりおいひぃ~~」 渋皮栗モンブラン、最高~~~~っ! こうして、俺はルカたんと幸せなデートを楽しんだのであった。
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