ルカたんの秘密

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ルカたんの秘密

季節はもうすぐ冬。謹慎させられているヴィクトリオは留年になりそうだが、いないととても学園内が平和だった。ユリアンの方はと言うと、30股がヴィクトリオにバレてヴィクトリオの元を追い出されたらしい。 あんなに執着していても、さすがに30股もやっていれば愛想を尽かされるようだ。勉強になるな。いや、なるかいっ!俺はルカたん一筋じゃあぁぁぁっっ!! そして王城を追い出されたユリアンはさすがにハリカ嬢からも伯爵家を除籍されて平民に落ち、学費が払えない上に成績もよくなく不純同性交遊を繰り返したために退学になって追い出された。 なお、ユリアンと不純同性交遊をした令息たちのほとんどが学園を去り、更には廃嫡、除籍された者も多く出たらしい。その上婚約破棄になった家には多額の賠償金を慰謝料として請求され、その原因になったユリアンにも責任を取らせるべきだとユリアンは多数の貴族の家々に訴えられ、賠償金の支払いをするために男娼館に働きに出されたらしい。支払い終えるまで決して出ることはかなわないが、本人としては毎日性交を楽しめる夢の職場なのだとか言っているらしい。ぐぇ。 そんなわけで平穏な学園生活を送っていたのだが。 俺はルカたんやみんなといつものようにランチタイムで集まっていれば。 「おい、リュリュ・スノーフレーク!」 突然誰だと思えば、そこにはヴィクトリオがいたのだ。 謹慎明けたのか。てか、何でまた俺?ユリアンに鞍替えして、30股されて落ち着いたのかと思えば、違ったのか? 「貴様は、貴様は一体何なんだ!」 いや、お前が何なんだ。さすがにルカたんもムッとして、俺を背後に庇ってくれる。そのまま後ろから抱き着きたい衝動に見舞われながらもちょっと我慢してその背後からそっと様子を窺う。 ーそのまま抱き着いちまえ!ー ヤメテー。アンズさんヤメテー。今双子テレパス使わんといてー。誘惑せんといてー。 「私が……私のことが好きではないのか!」 あ゛……? 「せっかく、せっかく何度も誘ってやったのに!」 いや、全部拒否ったじゃん。 「私がこんなにもお前のことをっ」 「いや、ユリアンとの関係はどこ行ったんですか!」 さすがに俺も言い返す。 「そうだね。鞍替えしたんじゃないの?」 と、ハヤトさまも。みんなも頷いてくれる。 「そ、それは!お前の気を引こうとだな」 どうやら、一方的に燃え上がっていたのはユリアンだけだったようだ。つまり俺の気を引くためにユリアンと付き合ってたの?リーディアさままで傷つけて? 「まだ諦めていなかったのか」 その声は、普段のルカたんの声よりも低く、地を這うような声だった。 る、ルカたん?何かルカたんからおどろおどろしい魔力のようなものが煮えたぎったように出ているんだけど。 「ひっ、ま、魔眼!?」 ……へ?……魔眼?ヴィクトリオが尻もちをつく。 「あ、まずい!彼の魔眼はっ」 慌ててハヤトさまが叫ぶ。え、何!? 「とりま止めた方がよくね~?」 ゼナは冷静すぎるぅ~~~っ! 「止めないと、いや、止めたら巻き添えにっ」 ハヤトさま、だから、だからどうなるの!?魔眼って何!? 「ば、バケモノぉおぉぉっっ!!!」 ヴィクトリオは憐れにも鼻水や涙ボロボロで錯乱していた。 「貴様など、とっとと葬ればよかった!」 いやいやいや、ルカたんったら何いって!一応まだ、王子!まだ王子~~~~っ! ぎゅむっ 俺は反射的にルカたんの背中に抱き着いた。 あ、ルカたんの体温。ルカたんの匂い。これ、最高かも~。って、そうじゃない~~~~っ。 「こ~らっ、ルカたんっ」 と、呼びかければ。 「――――っ!りゅ、リュリュ」 どしたの?何か驚愕したような表情を浮かべて。あ、ルカたんの目が光ってるような。魔眼って奴かな。 「ほら、なでなでもしてあげるから」 「いや、もう少し、このまま」 腕を解いてなでなでしようとすれば、不意にがちっと腕を掴まれた。 「りゅ、リュリュ。私が恐いか?」 力なくそう呟いたルカたんの目は次第に暗い、いつものダークレッドに戻っていく。 「何で?ルカたんに触れてるとすっごい安心するけど?ほら!」 すりすり。あぁ、ルカたん吸引~~。あ、これめっちゃいいかも。 「リュリュ」 「リュリュくんってやっぱすごいね」 と、ハヤトさま。 「ルカさまの魔眼、初めて見ましたが。すごいですわ。ヴィクトリオ殿下が涎垂らして失神しています」 と、リーディアさま。 え、涎垂らして失神?わぁ、見たくなかったー。 ズドンッッ!! ぎゃああぁぁぁぁっっ!?ルカたん!?何で魔法弾ヴィクトリオにぶち込んだのぉっ!? 「あんな汚いもの、見なくていい」 するっとこちらを振り向いたルカたんになでなでされて抱きしめ返される。 「ルカたん」 「リュリュは、俺だけ見ていて」 「ん、わかった」 こくんと頷けば。 学園の講師陣も集まってきて、ヴィクトリオの処理はひとまずお任せし、俺はルカたんにお姫さま抱っこされて退場となったのだった。
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