無重力に放り出されたような

2/2
前へ
/11ページ
次へ
 一年前とちょっと前……私が転校したのは、六年生の六月だった。  半端な時期の転校を多感な同級生たちにいぶかしまれ、私は遠巻きにされていた。  たまたま隣の席だった未宇が話しかけてくれたから、休みに会おうと誘ってくれたから、なんとかクラスで平穏に過ごせたのだ。  それこそ不安定な足場でも、立ち続けることができたのに。  未宇がかかった病気の名前はいまだにうろ覚えだけど、治療に一年かかり、場合によっては死ぬというのはすぐに覚えた。  転校してきてから未宇が入院するまでの数ヶ月、ずっと一緒に過ごしていたから、何をしていても未宇を思い出す。  一緒に通っていた通学路を歩いたり空席の机を見るたび、足元がふらつくのを踏ん張った。    メッセージを送るといっても、別に返信が欲しいわけじゃない。  私はここにいて、未宇のことをいつまでも待ってるよ。  そういう気持ちを伝えたかっただけなのに。 「とにかく、連絡を取りたいのは千波(ちなみ)の都合でしょう。いま一番大変なのは未宇ちゃんなんだから、落ち着いたころに連絡しなさい」    なにを書こうかなんてお母さんに相談するんじゃなかった。  足元のぐらつきが大きくなるだけだった。  だから、今まで遠慮していた本音がこぼれ落ちたのだ。 「私と未宇はそんな冷めた関係じゃない! お母さんみたいにねぇ、なんかあったらすぐ離婚するみたいな、そういうのとは違うの!」    未宇がしんどいなら、今度は私が手をさしのべたい。  どこかに導けるわけでは無いけれど、されて嬉しかったことを返すくらいはいいじゃないか。  そうとしか考えられなかった。  
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加