一年後

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一年後

「そんなことがあったんだ」  教室に並ぶ机のうち窓際の真ん中とその後ろは、未宇が入院する前に私たちが座っていた席だ。  未宇の背中越しに見える黒板との距離感を懐かしく思うなんて、あのときは考えもしなかった。    私たちは今、通っていた小学校に来ている。  一年の治療期間を終え、ちょっと前に未宇は退院できた。この夏休みが終われば私と同じ地元中学に通い始める。  半袖からのぞく腕は記憶よりも細いし、顔の血色も前より薄い。白い花紙を重ねたみたいだ。  だけど、未宇は戻ってきた。  一年ぶりの再会を二人で喜びあったあと、「小学校に行きたい」と未宇が言った。  卒業式に出られたかったからという理由に行こうと即答して、私もついてきた。    幸いにも去年担任だった先生がいて、涙ぐみながら未宇と私の手を握りしめてくれた。  その後校長先生たちの許可はすぐにおりて、差し出されたスリッパにむず痒い気持ちになりつつ、かつて通った六年一組の教室へ急いだ。  
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