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教室内の掲示物は知らない名前ばかりだし時間割もぜんぜん違う。
でも棚のラクガキは残ったまま、エアコンの冷えがイマイチなのも一緒だった。
変わらないものもあるのが嬉しくて、私たちは大げさに喜んだ。
だって、未宇がいなくなったあの日の続きを過ごす気分になれたから。
帰る前に教えてね、と職員室に戻る先生を見送ってから、私たちはどちらともなく席に座ると語り合った。
「うん。なんかお母さんに一般論で決めつけられるのが嫌でさ。ただでさえ未宇が入院して、この世の終わりな気分だったから」
「じゃあ……不安にさせたよね。私ぜんぜん返信しなかったから」
「それは平気。既読ついてたら生きてるー! って安心してた」
「生きてるって」
あははと笑う未宇の声が、中学より少し狭い教室に弾けながら広がっていく。
「今だって思ってるよ」
「ええー心配しすぎだよぉ」
そんなこと言われても実物を前にすると、画面越しとは比べ物にならない現実感と安心感があるんだもん。
未宇はちゃんと生きている。
ちょっと手を伸ばすだけで、丸っこい肩に届いて「何?」って首をかしげる様子が見られる。
一年前は当たり前だった光景に目の奥がじんわり熱くなった。
まばたきを何度か繰り返してから、私は気になっていたことを切り出した。
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