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一度、大きく深呼吸した。
転校の理由は、誰にも話したことがない。聞かれても曖昧に濁して避けてきた。
打ち明けられるのは、これからも未宇だけなんじゃないかと思う。
「転校してきたのはさ、親が離婚して、お母さんの苗字になって、家も変わって…………。しかも私、中学受験するはずだったの。だけどお金足りないくなったからダメになってさ。なんのために頑張ってきたんだろうって」
「それは……きついね」
「未宇が深海なら、私は宇宙だったかも。地面が割れて宇宙空間に放り出されたみたいな気分だった」
「宇宙旅行なら行ってみたいけど」
「私は無理。行きたくないなら、深海も宇宙も同じだよ」
「……たしかに」
「生きるか死ぬかよりマシだけどさ。とにかく全部どうでもいいって感じだった。だけど未宇はいろいろ約束するじゃん。今度これ見よう、ここ行こうって」
「そうだったかも。お節介だったね」
「ううん。それがよかったの。だから絶対、私も毎日メッセージするって決めたんだ。ね? お互いお節介なの。それがうちらの普通」
肩を振るわせた未宇が、「そういうこと」と何度も頷くから、私も思いきり笑った。
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