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キイちゃんは、黒猫の影はこちらを見たまま動きません。わたしの話を理解したのでしょうか。理解していなくても関係ありません。
わたしは床に置いていたダンボール箱を手に持ちました。黒猫の話を聞いた後、この時のために用意しておいたものです。
キイちゃんがどんなつもりであったとしても、この中に閉じこめてしまえばいいのです。わたしは全速力で走ると、箱を壁に押しつけました。
影は軽々と上へ身をかわしました。そのまま、天井へと上っていきます。もう、わたしの手は届きません。
影は天井を横切って、黒板の方へと向かっていきます。思わず机の上のペンケースを天井へと投げつけました。影には当たらず、あさっての方向にぶつかりました。下に落ちたペンケースは、ヒステリックな音を立ててペンをぶちまけます。
もう、わたしには何もできません。キイちゃんを止めることはできません。
「お願い……やめて」
それでも手を伸ばします。何の意味もありません。むなしく空を切ります。
時計の針は、そろそろ15時を指そうとしています。教室のすみにたどり着いた影は、時計の上におおいかぶさりました。
影がぐるぐると渦をまきました。頭がくらくらします。立っていられません。全身から力が抜けて、世界が遠のいて行きました。
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