黒猫が廻る

11/13
前へ
/13ページ
次へ
 キイちゃんは、黒猫の影はこちらを見たまま動きません。わたしの話を理解したのでしょうか。理解していなくても関係ありません。  わたしは床に置いていたダンボール箱を手に持ちました。黒猫の話を聞いた後、この時のために用意しておいたものです。  キイちゃんがどんなつもりであったとしても、この中に閉じこめてしまえばいいのです。わたしは全速力で走ると、箱を壁に押しつけました。  影は軽々と上へ身をかわしました。そのまま、天井へと上っていきます。もう、わたしの手は届きません。  影は天井を横切って、黒板の方へと向かっていきます。思わず机の上のペンケースを天井へと投げつけました。影には当たらず、あさっての方向にぶつかりました。下に落ちたペンケースは、ヒステリックな音を立ててペンをぶちまけます。  もう、わたしには何もできません。キイちゃんを止めることはできません。 「お願い……やめて」  それでも手を伸ばします。何の意味もありません。むなしく空を切ります。  時計の針は、そろそろ15時を指そうとしています。教室のすみにたどり着いた影は、時計の上におおいかぶさりました。  影がぐるぐると渦をまきました。頭がくらくらします。立っていられません。全身から力が抜けて、世界が遠のいて行きました。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加