黒猫が廻る

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 ひとり残されたわたしは、考えます。  黒猫が結局何者で、何を考えていたのかはわかりません。けれど『みんなニコニコ、なかよし2組』という目的は、意外と本気だったように思えるのです。  誰かを1人のけ者を作るゲーム、ハンカチ落とし。それを繰り返すことで、鬼以外のプレイヤーは思うことでしょう。「絶対に、ああはなりたくない」と。  同時に、一度鬼になった者は必死に「みんな」の中に戻ろうとするはずです。戻ったら今度は絶対に外れたくないはずです。のけ者にされる悲しさと、おそろしさをよく知っているからです。  誰か1人が絶望して、それ以外が少しずつ不安になっていくゲーム。その中で1つだけどんどん強くなっていくものがあります。「みんな」です。  誰もが輪の中にいることを強く望むようになります。それを疑うヒマがあったら、どうやったらそこに居続けられるかを考えるようになります。  「みんなニコニコ」かどうかは分かりませんが、「なかよし2組」の完成です。  いけない。こんなことを考えてもしかたないですね。わたしには、もっとやるべきことがあります。  次ののけ者を見つけ、わたしの体を取り戻すことです。次もキイちゃんを選ぶべきか、他の誰かにしておいた方がいいのか。つけ入るスキがあるのは誰か、引きずり下ろせそうなのは誰か、「いらない」のは誰か……。  明日の教室を見て、じっくり選ぶとしましょう。  長くのびた夕方の影に、わたしはひとまず身を隠すことにしました。  
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