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今度はわたしが腕をつかまれました。次の瞬間、頭の中で何かがぶつかります。目の前で星が散って、立っていられなくなってしまいました。
息を荒げて再び立ち上がった時、わたしは1つの記憶を取り戻しました。暗い部屋の中でしたハンカチ落としの記憶。クラスみんなで、キイちゃんを見殺しにした記憶です。
「じゃあ……あなたは、あのゲームで鬼をしていたの?」
黒猫は小首をかしげ、少し固まりました。しばらくしてから、口を開きます。
「ゲームに負けた対価として、彼女の身体をお借りしています」
質問には正面から答えられていませんが、それどころではありません。今、とんでもないことを聞きました。キイちゃんは、この黒猫に乗っ取られてしまったということでしょうか。
「だったら、本物のキイちゃんはどこに……?」
「そこにいますよ」
黒猫は近くの壁を指しました。よく見るとその中で影が動いています。小さな猫の形をしていました。
動きや態度はとてもおどおどしています。目の前で本人の身体を乗っ取っている黒猫よりも、ずっとキイちゃんらしく思えました。
わたしが見つめていることに気づいたのでしょうか。影はパッと逃げ出し、机の陰に隠れてしまいました。
「キイちゃんは……もう戻れないの?」
おそるおそるの問いかけに、黒猫は首を横に振りました。
「次のハンカチ落としで、新しく決まった鬼と交代します。私がお借りするのは、別に誰の身体でもかまいませんから」
「次のハンカチ落とし……?」
こんなことが、また繰り返されるということでしょうか。冗談ではありません。
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