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 授業が始まってからも、サツキの様子は変わらず、尻込みを繰り返しているうちに、放課後になってしまった。  足早に教室を出たサツキを慌てて追いかけ、そのいつもより小さな背中に声をかけた。 「サツキ!」  サツキはゆっくりと振り返る。表情はうつろで、続けようとしていた言葉が引っ込みかけたが、なんとかもう一度奮い立たせる。 「一緒に、帰ろ」  わたしから誘うことはほとんど無かったから、サツキは少し驚いたようだった。見開かれた瞳が揺れ、その後に遅れて口が「うん」と動いた。  傾いた日差しと、冷たい北風を受けて、わたしたちは通学路を歩いた。普段なら言葉数の少ないわたしの代わりにサツキが会話をリードしてくれるのだけど、この日ばかりはそうもいかない。わたしが誘ったんだから──自分にそう言い聞かせて、寒さと緊張で震える手を握りしめた。 「何か、あった、よね?」  隣を歩いていたサツキの肩が、一度大きく揺れた。口をぎゅっと結び、今にも泣き出しそうな表情をしている。 「向こうで、話、聞かせてくれる?」  わたしは交差点の向こうに見える、背の低い生垣に囲まれた公園を指さした。 「うん……」
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