3人が本棚に入れています
本棚に追加
自分の無力さが悔しかった。わたしの方から事情を訊いておきながら、かける言葉が見つからない。
そんなわたしの心境を察してか、サツキはそれまでと比べるとやや明るい口調で「あーあ」と言った。
「どうして、こんなことになっちゃったんだろ。ちょっと前までは、家族3人で楽しく過ごしてたのに」
しかし空元気もそこまでだった。サツキの腕の中のランドセルが強く抱きしめられ、音を立てる。
「このままじゃ、お父さんのこと嫌いになっちゃいそう……それに、お母さんのことも……もう、どうしたらいいかわからないよ……どうすれば、昔みたいに戻れるの?」
大粒の涙が、サツキの瞳からこぼれ落ちた。
わたしはハンカチを取り出して、恐る恐るその涙を拭った。
最初のコメントを投稿しよう!