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 自分の無力さが悔しかった。わたしの方から事情を訊いておきながら、かける言葉が見つからない。  そんなわたしの心境を察してか、サツキはそれまでと比べるとやや明るい口調で「あーあ」と言った。 「どうして、こんなことになっちゃったんだろ。ちょっと前までは、家族3人で楽しく過ごしてたのに」  しかし空元気もそこまでだった。サツキの腕の中のランドセルが強く抱きしめられ、音を立てる。 「このままじゃ、お父さんのこと嫌いになっちゃいそう……それに、お母さんのことも……もう、どうしたらいいかわからないよ……どうすれば、昔みたいに戻れるの?」  大粒の涙が、サツキの瞳からこぼれ落ちた。  わたしはハンカチを取り出して、恐る恐るその涙を拭った。
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