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「ふたりのこと、嫌いになっても仕方がないよ。サツキは何も悪くない。サツキがこんなに苦しい思いをするの、間違ってるよ」 「リエ──」  黒いランドセルがサツキの膝から地面に落ちて、鈍い音がした。わたしはそれに気を取られて、自分の身に起こったことに気付くのが一瞬遅れた。 「サツキ……?」  サツキの体温と体重、それに髪の毛の香りが、わたしに覆い被さっている。  わたしの耳元で咽び泣くサツキの頭に手を触れようとして、止める。わたしはその手をじっと見て、泣きたくなった。  普通じゃない父親と、普通じゃない母親に苦しめられているサツキ。今、彼女がこんなに辛い思いをしているのにも関わらず、心臓が高鳴ってしまう自分も、きっと普通じゃない。わたしのこの感情を知ったら、サツキは深く傷ついてしまうかもしれない。こんな気持ち悪い自分が、彼女の近くにいてもいいのだろうか。 「リエ、ありがとう……」  彼女の言葉に耐えきれず、わたしの目にも涙が滲んだ。  わたしは不安を振り払うように、言葉を絞り出した。 「わたしは、何があっても、サツキの味方だから」
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