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 誰もそれに興味を惹かれなかったはずはない。当時、ランドセルと言えば男の子は黒、女の子は赤と決まっており、黒いランドセルを背負う女子なんて、全校を見渡しても他にひとりもいなかっただろう。  それにもかかわらず、誰も触れられなかったのはきっと、その状態の悪さにもあった。彼女に限らず、5年生ともなればみんな、1年生のようにピカピカ、というわけにはいかないが、それにしても度が過ぎている。全体的にひび割れているし、特に持ち手や肩紐はほとんど表面が剥がれ、白っぽくなっている。粗暴な男子でさえ、もう少し状態はいい。子供ながらに、「うかつに触れてはいけない」と躊躇ってしまうほど、そのランドセルは傷んでいた。
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