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 休み時間もひとり絵を描いていたようなわたしは、元来、そんな華やかな人間と関わり合いを持つことはなかったのだけれど、たまたま最初のだったためか、サツキはなにかと気にかけてくれた。 「理科室って、渡り廊下の先だっけ?」  例えば移動教室があると、サツキは場所を確かめるふりをして、わたしがひとりにならないよう、ぴたりと横についた。 「リエって、頭いいんだね」  クラスのみんなはわたしのことを苗字で呼ぶが、サツキは隣の席に座ったその日から、下の名前で呼ぶ。 「急に、どうして?」 「さっきの算数のプリント、すぐに解き終わってたじゃん。すらすらーって!」  大袈裟なジェスチャーに、つい頬が緩んでしまう。  そんなことないよ──その返事を予め予想していたかのように、サツキは「いや」と遮った。 「わたしなんて、解ける問題探してたら、授業終わっちゃったよ」  そう言って楽しそうに笑う無邪気な笑顔を見ていたら、なんだか胸の奥が暖かくなってきて、わたしもつられて笑ってしまった。
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