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 わたしたちを結びつけていたものが、もうひとつあった。わたしたちはともに片親で、わたしは母子家庭、サツキは父子家庭だった。  2年生のときに病気で父を亡くし、以来、女手一つで育てられてきたわたしは、そのことでどこか引け目のようなものを感じている節があった。サツキもまた、同じだったのかもしれない。そしてそれ以上に、彼女の家庭環境は複雑だった。  その日は毎年11月末に行われる学芸会のため、放課後も教室に残って準備をしていた。劇で使う道具や背景の絵の制作が遅れていたのだ。それにも関わらず、スポーツ少年団や塾を理由に、ひとり、またひとりと抜けて行って、1時間もするころにはわたしとサツキを含めて5人ほどになっていた。  結局、たいして進まないまま完全下校時間の17時になって、見回りの先生に追い出されてしまった。 「みんな、あんまりやる気ないのかな」 「そうかも。前の学校では、もっとみんな真剣だった?」   わたしとサツキは帰り道の方向が同じで、しばしば肩を並べて歩いた。厳密にいえば、わたしたちの間には身長差があったから、並んでいたのは頭と肩だったけれど。  冬が近づいてきたこの季節、空はもう薄暗く、遠くからではランドセルの色もわからないくらいだから、後ろから見てもカップルに間違われることはないだろう。 「うーん、今思えばだいたい同じかな。運動会の方が、気合い入ってた」 「来年の運動会、サツキは主役になれそうだね」  わたしの言葉に、サツキは嬉しそうに「へへ」と笑った。
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