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 12月の、月曜日のことだった。  朝、教室につくと、男子たちが10人近く集まって、なにやら話をしていた。それ自体は特別、珍しい光景ではなかったのだけれど、普段ふざけあっている彼らが神妙な面持ちでいるのが気になった。  彼らの様子を眺めていると、ひとりが教室の入り口のほうを見て、はっと息をのんだ。つられて、その視線の先に目をやると、ちょうどサツキが入ってきたところだった。  彼女のその様子に、わたしは戸惑った。クラスに馴染んでからのサツキは、いつも「おはよう!」と大きな声で挨拶をしながら教室に入ってきて、荷物を机に置くと、すぐに誰かのもとに寄っておしゃべりをする。しかしこの時の彼女は、うつむき加減で無言のまま自分の席につくと、そのまま机に顔を伏せてしまった。  男子たちの様子を見るに、何か事情を知っているようだったが、彼らもおろおろと様子を伺っているだけで、誰も声を掛けようとはしない。やがて担任の先生がやってきて、散り散りになった。  すでに何度か席替えをした後だったから、わたしとサツキはもう隣同士ではない。右斜め、4列ほど前の席に座る背中を、わたしもただ見つめることしか出来なかった。
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