第7話 俺

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第7話 俺

 ジェイドから偽装婚約を持ちかけられてOKしてから、私たちはこれからのことを話し合った。  とりあえず、両家の了承を得なければならない。  ということで、私はジェイドを連れて、久しぶりに実家に戻った。  婚約の話を出したとき、反対されたり、根掘り葉掘り聞かれたらどうしようかと不安だったけど、 「ええええ⁉ ジェイド君と婚約⁉ え、反対しないのか? するわけないじゃないのー‼」 「いやぁ、ジェイド君ならコーラルを安心して任せられるよ。こんな娘だが、どうぞよろしく頼むよ」 と、全く疑われることなく、両親から了承を得ることが出来た。  ちなみに、ジェイドの家にもご挨拶に行ったけれど、我が両親の反応とさほど変わりはなかった。  コーラルちゃんならいいよー、というジェイドのお母さんの一言によって、あっさりと了承された。  両家の両親とも、何かあっさりしすぎてない?  あまりにも問題無く進みすぎて、逆に不満と不安を感じつつも、私たちは両親たちの勧めによって、一緒に暮らすこととなった。同棲ってやつだ。  婚約が決まってすぐに同棲って早すぎるんじゃないかと反論はしたけれど、 「いやいやいやいや! 結婚するなら同棲はしておいた方がいいわ‼ 結婚後、こんなはずじゃなかったって後悔しないためには、やっぱりお試し期間があったの方が良いと思うの! 一緒に暮らして見えてくるものもあるからね」  と、母に強くおされ、前家庭円満の女神がそう言うなら間違いない! ということで、残った両親たちにも勧められ、挙げ句の果てには、偽装婚約仲間であるジェイドからも、 「同棲をしたほうが、婚約に説得力が生まれます」  と言われ、今に至る。  当初は渋っていた私だったけれど、ちゃんとお互いのプライバシーを配慮した家を用意してくれたため、同意に至ったというわけだ。  まあ、ジェイドとは幼い頃からの付き合いだし?  一緒にお風呂に入ったことも、一つのベッドで寝たことだってあるし?  今更意識する必要なんてないわけで。  そんなことを考えながら、箱に入った自分の荷物をジェイドに手渡した。 「荷物はこれで全てですか?」 「うん。ごめんね、運んで貰って」 「大した量ではありません。想像した以上に少なくて、逆に驚いています」  驚いたと口にしつつも全く表情を変えないジェイドに、心の中で苦笑した。  彼の丁寧口調にも他人行儀な態度にもすっかり慣れた。  今では、知性の男神としてピッタリだと思うほどだ。  自分からぐいぐいと話すことはなく、もっぱら聞き専。だけどアドバイスを求めれば、今までの話を踏まえた適切な回答が返ってくる。  普段の態度も物静か。常にローブを身に纏いフードを被っているので、存在感も薄い。  一言で言えば、とっても地味だ。  小さいときは、もっとキラキラした少年だったイメージがあるんだけど……思い出補正かな?  そんなことを考えながら家のドアを閉めると、私たちは各々の部屋に閉じこもり、荷ほどきを行った。  高くなっていた日が陰りだした頃―― 「やっと終わったー!」  片付けが終わった自室を、満足した気持ちで見つめながら、私は伸びをした。  ベッドに机、本棚と細々した物を入れる棚が、四隅に配置されている。一人で暮らしていた部屋とほぼ同じレイアウトなので、引っ越しした違和感はあまりない。   さて、ジェイドの方も終わったかな?  彼の様子を見るため、階段を降りて、一階にあるジェイドの部屋に向かう。  ノックをして入室の許可を貰い、部屋の中に入った私は、思わず声を上げてしまった。  部屋の壁がほとんど本棚になっていて、本で埋め尽くされていたからだ。本も、雑誌や娯楽作品ではなく、小難しい書物や辞書などばかり。私の知らない言語で書かれた本も少なくない。 「凄いわね、本の量……だから1階の部屋が良いって言ったのね」 「まあ、父の書斎に比べたら全然だけど」 「本と言えば、ノア家には確か地下に、とっても広い書庫があったよね? それこそ、図書館並みの」 「ああ。そういえば昔、二人で忍び込んだことがあったな」 「なつかしー! でも、あまりに広いから私迷子になって、ジェイドが助けに来てくれのよね」 「俺が見つけたとき、涙と鼻水でぐっちゃぐちゃにしながら抱きついてきたっけな」 「そうだったっけ?」 「なんでそこは覚えてないんだ……その後、俺が滅茶苦茶怒られたんだぞ?」 「あははっ、でも小さい頃の話だし。ジェイドこそ、よくそこまで覚えて――」  ん?  
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