第1話 ほたるの決意

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「お疲れさま。今日もありがとね」 「こちらこそありがとうございました。明日、またよろしくお願いします」 午後五時。シャッターを下ろし、店の前まで見送りに出て来てくれた鯨さんに一礼する。 「やだよぉ。敬語は仕事中だけって話だったろう」 鯨さんが私の肩を叩く。 仕事中は師匠と弟子。敬語でとお願いしたのは私だ。 「あはは、ごめん。でもほら、お疲れさまでしたって挨拶をする時が、ちょうど仕事の終わりって感じで切りが良いでしょ」   まぁそうだねぇ。鯨さんが店の角に立つ郵便ポストにもたれて肩をすくめた。 私が帰ろうとする背中に「ほたるちゃん」と声を上げる。
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