第2話 桜舞う、ご神木の下で。

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食パンを切り分けてソースを塗り、店で揚げた分厚い豚カツと千切りキャベツを挟んでいく。 くじらベーカリーのカツサンドは、一つ一つ豚肉にパン粉をまぶして揚げるのだ。 それはコロッケパンにしても同様だった。   流石に総菜パンの揚げ物は冷凍のものを揚げていると思っていた私は驚いた。 鯨さんいわく店を始めた当初からの商品で、旦那さんのこだわりらしい。 食べる時間が無い人でも、ひとつでお腹がいっぱいになるようなパンを作る。 忙しくてもしっかりお腹を満たして欲しい。 それが旦那さんの願いだったと言う。   サンドイッチで出た食パンの耳は一部はラスクにして、残りは耳だけを袋詰めしておく。 食パンの耳はタダだ。 実はこのパンの耳は貰いに来る人が結構いて、在庫が無いとなったら残念そうに帰って行く人がいるくらい、密かな人気商品だったりする。   揚げたパンの耳にグラニュー糖をまぶし、袋詰めしていく。 出来上がった商品を店に持って行こうとしていると 「すみませーん」 「はーい、お待たせしまし――」   トレイとトングを手に、申し訳なさそうに会釈をしたのは、あの柴犬(子犬)スマイルのサラリーマンだ。
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