第2話 桜舞う、ご神木の下で。

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父は口の上に付いたビールの泡を手の甲で拭いながら頷いた。 「社長だ」 「わお」   わざとらしく驚いて見せたものの、心の中は舞でも踊り出しそうなほど大喜びだ。やっぱりついてる。 「明日にでも話しておく」 「うん。ありがとう」   掃除と資材を運んだり、壁の塗り直しくらいなら私でもできるだろう。 「本気なんだな」 「何よ急に。本気に決まってるじゃん」 「……そうか」   もう空になっていたらしいビールの缶から、ずずっと最後の一滴を啜った父は「早く寝ろよ」と缶を洗い、そそくさと自分の部屋に籠ってしまった。   二階の自室に戻り、敷いておいた布団にダイブした。 リフォームの事は明石さんにお願いしたら良い。 これが親孝行になるとわかってくれるだろう。 「頑張らなきゃっ」 感極まって掛け布団を抱きしめながら、ひとり転げまわった。
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