第2話 桜舞う、ご神木の下で。

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「俺らの仕事は終わったけど」 「ありがとうございました。本当、色々とご迷惑をお掛けしてすみませんでした」 明石さんが満足気に店内を見回す。 「ま、嬢ちゃんが希望した通りにはなったんじゃねぇか」 「そうですね。明石さん達のお陰です」 「三軒向こうに鯨ばあさんのパン屋があるのに、またなんだってここで始めるんだ」   眉をひそめる明石さんの意見も、これまで何度も言われてきた。 鯨さんの店でバイトしている時に、くじらベーカリーが無くなるのかと何人もの客に訊ねられた。 「中華料理はやっぱり父じゃないと。私はパンを作るのが好きなんです。食べるのも好きですけど、作ったパンを食べて貰うのがもっと好きなんです」 長年愛されてきたくじらベーカリーの並びに作るなんて、まるで喧嘩を売っているようなものだ。 もちろんそんなつもりは無く、寧ろ、大好きな鯨さんのお店と並んで一緒にパンのお店を作れるのが嬉しい。 実際、鯨さんも応援してくれている。 そもそも私が作るパンと鯨さんのパンはやっぱり味も違う。 それぞれの美味しさがあるのだから、ライバルだとかそういうものには成り得ないと思っている。
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