第2話 桜舞う、ご神木の下で。

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開業に必要な届け出をしたり、開業にあたっての必要な資格――食品衛生責任者を取り、そこからようやく食品営業許可や、菓子製造許可を取得する。 その間に保健所の立ち合いで水質検査を受け、同時進行でメニューの試作を日々繰り返していた。   そうしているうちに年は明け、父とお雑煮を食べただけであっさりと正月は過ぎ、あっという間に世の中は春になっていた。   忍陵商店街から脇道に入った先にある神社は華やかな桜色に染まり、花びらがひとつ、またひとつと商店街に舞っていた。 「どうよ」   水色のドアの横に、手作りの立て看板を置いた。 「アヒル……」   父が看板を見下ろしながら呟く。 「ふふん、アヒルパン。可愛いでしょ」 何を隠そう。私はアヒルという生き物が大好きだ。 白い羽も、そのシルエットも、あの離れた目も、鳴き声も、何もかもが愛おしい。 「まだアヒルが好きだったのか」 「あれ、知らなかったの? お父さんと一緒に見た時からずっと好きだよ」
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