第2話 桜舞う、ご神木の下で。

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私のなかにある一番古い記憶は、父に連れて行ってもらった大阪・ワールド牧場だ。 そこで初めてアヒルを見た。 どうして色々いる動物の中で、ひと際アヒルに惹かれたのかは覚えていない。 だが、父と一緒にアヒルを間近で見た事は、幼少期の想い出として、最も印象深く残っていた。   パン屋のロゴはアヒルだ。 看板には親子が並んで歩く絵と、その下にポップな字体でアヒルパンとデザインしている。 「店は明日からか」   水色のドアに貼った開業日のお知らせを見ながら、剃り立ての顎を撫でた。 「うん。三月二十日。私の記念すべき開業日」   だが、とりあえず今日はこれから行くところがある。 「神社に行って神頼みして来ようと思う」 これからくじらベーカリーで昼食用のパンを買うのだと言う父と別れ、神社へと向かった。
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