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丘埼神社と記された石碑の隣に立つ朱色の鳥居をくぐり、境内へと続く階段へと踏み出した。
麗らかな甘い風がポニーテールの毛先を揺らし、モンシロチョウが少し前をふわふわと横切った。
長い階段を上り切り、ふぅ、と一つ息を吐いた。
商店街を見渡し、自分の店の頭が見えて、自然と口角が上がる。
「とにかく神頼みっ」
足早に拝殿へと向かう。
「あれ?」
拝殿のすぐ横にあるご神木の桜の木。
その下に、赤いランドセルを背負った女の子がいた。
入学式用だろうか、白のラインが入った黒いスカートに白いブラウス。
艶のあるエナメルの黒のパンプスを履いて、はにかみながらポーズをとっている。
胸元にかかる三つ編みが、彼女が動くたびに感情を表すように跳ねていた。
その手前でカメラを構えている後姿の男性は、父親だろう。
「良かったら、お二人揃った写真を撮りましょうか」
せっかくの機会だ。二人で撮った方が思い出にもなるはず。
そう思って声をかけた。
「あっ――」
振り返った男性に、咄嗟に上げた声が裏返った。
男性もまた、私を見て目を丸くして、柴犬スマイルを浮かべた。
「こんにちは」
という事は、この少女は……
「む、娘さん」
「そうです。ほら明日香、ご挨拶して」
明日香と呼ばれた女の子は、親子の時間を邪魔された不満からか唇を尖らせて
「やだ」
頬をぱんぱんに膨らませ、睨まれてしまった。
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