第3話 忍陵町商店街「旅するアヒルパン」

12/12
前へ
/47ページ
次へ
「ったく、結構溜まってるし」   上蓋を下ろし、セットしていたゴミ袋を一気に引き上げて地面に下ろす。 使い捨てのビニール手袋を嵌め、用意した別のゴミ袋にペットボトルや缶を分けていく。    急がないと。   次第に強まる雨脚。頭上の日よけテントが太い音を立て、伝い落ちて来る雨が一本の筋となって飛沫を散らしながら背後に落ちる。 「えっ――」   空き缶に手を伸ばした時、紙屑の中に白く細長いものが見えた。 しなやかな曲線を描いているそれは、そっと触れると微かに動いた。 「嘘でしょ、まさか」   「それ」を覆うゴミを手で掻き分けると、現れたのは子猫だ。   白く、もう泣く力さえ残されていない様子の子猫が横たわっているではないか。 苦しそうに舌を出して、小さな背中を懸命に上下させていた。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加