【プロローグ】

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【プロローグ】

「あっ……」 見知った顔に街中で偶然出会うと、私はその場から動けなくなった。 「あっ、結衣!? 久しぶり! 元気だった?」 「……うん」 中学の同級生だった沙織に会うのは約10年ぶり。 沙織は元気だった? そう聞きたくても私には聞けなかった。 羞恥と後悔が、私の声を喉の奥に押し込む。 逃げたくても、足をその場に釘付けにする。 隠していた黒い穴が、見ないようにしていた黒い穴が、古傷と共に重苦しい音を立てて再び開くのを感じた。
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