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「新郎ヨシオ。
あなたはここにいるヨウコを、健やかなる時も病める時も……」
「はい、誓います」
妖怪と違って人間には、仕事とかお金とかいろいろ面倒な事がある。結婚したなら尚更だ。
ましてや妖怪より妖怪らしい人間も珍しくない世の中だ。生き辛いのは妖怪だけじゃない。
「新婦ヨウコ、あなたは……」
「はい、誓います」
だが、それでもヨシオとヨウコは結ばれた。
ヨウコはこれからもヨシオを化かし続けるだろうし、ヨシオは化かされ続けるだろう。
豪雨に濡れ嵐に吹かれ雷に打たれる事もあるだろう。
きつねが何故か教会でウェディングドレスを着ている、美しいがそれだけでなんだか嵐の予感がしないでもない。
だが、それでもいいじゃないか。
……さああっ……ぱらぱら……
ほら、ごらんよ。
コングラチュレーションの声と共に、今こそ二人の頬に眩しい雨が降る。
雨上がりに架かる虹の美しさを知っているのは、雨に濡れた者だけなのだ。
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