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驚く彼女の肩の手触りは、なんだかいつもよりもふもふしているが、それがどうした。まるで上等な毛皮の様で悪くない。
「お母さん!早く孫の顔を見てもらえる様に僕は頑張ります!」
「きゃあ」
いきなりの熱いセクハラ発言に、ヨウコの顔がポッと赤くなる。
次にヨシオはフウコを真っ直ぐに見た。
涙のせいか彼女の顔はなんだかもふもふしているが、だからどうした。
あのカップうどんのCMの女優にも引けを取らない美人じゃないか。
「でも、そうするとこんなに奇麗な女性がお婆さんになってしまいますね」
「あ、あらいやだわ」
フウコの頬にも年甲斐もなく火が灯る。
綺麗な女性なんて言われたのは何百年ぶりだったやら。
そしてヨシオが涙を拭っているうちに、雨も風も雷もぴたりと止んで、妖怪屋敷は本領を発揮し、あっという間に自己修復。
空は照れた様に夕焼けにかあっと染まりながら、何かあったのかい?ととぼけている。
ああ、もう夕方か。早いな。
そうだ!まだ大切な事を言ってない!
俺はこれを言うために来たんじゃないか!
ヨシオは再び正座をするとフウコに向かい、畳に額がつくまで深々と頭を下げた。
「ヨウコさんを、僕にくださいっ!」
……さああっ……ぱらぱら……
その時、天気雨が優しい音と共に田舎町に舞い降りたとさ。
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