家族はホワイト、ぼくはブラック またはエキゾチックアニマルなペット

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 ぼくの祖先は、南の大陸のどこか、暑い土地で暮らしていた。たぶん。だから、その環境に適応するべく黒い肌と縮れた髪の毛を獲得した。実に合理的だ。  だけど、ここみたいに北方の国に移ればその色と形質は、合理性を失う。ただ、黒人という区分だけが残る。それがぼくだ。この国で生まれ育ったけど、その区分から逃れられることは決してなかったし、これからも決してない。たぶん。  ぼくの“両親”は白人だ。陽光の貴重なこの土地に見合う、白い肌と薄い色の瞳と髪を持つ。ぼくは7年前、3歳のときに、彼らの養子になった。  ある土曜の昼下がり、ぼくがいた養護院にやって来た彼らは、そこに暮す大勢の子どもたちを見て回り、唯一黒い肌を持つぼくのところにやって来て言った。こんにちは、可愛い坊や。今日から私たちが、あなたのパパとママになるよ、本当の親だと思ってね。愛している、と。        ***  実際、“パパ”と“ママ”は、ぼくの面倒を実によく見てくれた。新品の服に靴、自分だけの文房具やサッカーボールも与えてくれた。どれも養護院では手に入れるべくもなかったものばかり。週末や長期休みには、遊びに連れて行ってくれる。それは今も変わらない。  そして、そうして出かける先々で、両親は知り合いはもちろん見知らぬ人からも、話しかけられた。  あら、その坊やは?と。  そのたびに彼らは応える。 「養子にしたんですよ。実の親を知らない可哀そうな子でね、だから私たちが、精いっぱいの愛情を注いで育てようと決めたんですよ」  相手は必ず異口同音に2人に言う。「ご立派です」「素晴らしいです」「なかなかできることではありません」。それからぼくに向かって言う、「あなたは幸せ」「運がよかった」「いい子にして、うんと恩返しをしなくちゃね」—。  そんな彼らを、“両親”はにこにこしながら見ている。ときどき、「いえそんな、たいしたことではありません」「これはまあ、私たち恵まれた立場の者の、いわば当然の務めなのだと思っているんですよ」、などと言いながら。
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