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「犯人は必ず、この中にいます」 会議室に僕と友人4人を集めてそう言い放った刑事が、今朝逮捕された。 どうりで見事な推理だったけど、証拠が揃わなかったわけだ。 良かった。僕が逮捕されなくて。 まさか警察署長が盗んだお金のたった2割を受け取る代わりに、僕と友人が捕まらないよう犯行の証拠を隠してくれるとは。 残りのお金は5人で山分けしよう。 僕の代わりで逮捕されちゃった刑事さんは気の毒だな。 まっすぐで正義感の強そうな警察官なのに無実の罪を着せられて。 プルルルルル。 僕の携帯が非通知の電話を着信した。 「はい?どちら様ですか?」 くぐもった男の声が聞こえる。 「悪いなぁ、これもボスの命令でよぉ」 「へ?」 「顔を上げろ」 慌てて前を見ると、黒塗りの車がすごい勢いでこっちに向かってきた。 「あ・・・」 ガシャンと大きな音を立ててぶつかり、僕の体は宙を舞ったーーー 「えーー、管内で重大な事案が続発する事態となってしまい、誠に申し訳ありません」 頭を下げる警察署長に、記者が質問を投げた。 「今回の二つの事案に関連はありますのでしょうか?」 署長が答える。 「二つの事案にはなんら関連はございません。警官による隠蔽及び裏社会との癒着事件と、5件の不幸な交通事故が立て続けに起こってしまったのです」 記者の追求は続く。 「しかし、一部報道では交通事故では暴走した車が黒塗りで、他にも共通点があったとか」 署長が苦笑する。 「そうですね。こちらも裏社会との関係を疑わねばなりません。今時珍しいまっすぐな熱血刑事だと思っていましたが、署内のデスクからは裏社会のボスである証拠が見つかりました。交通事故も彼の指示である可能性が浮上しています」 記者が質問を続けようとマイクを握るのを、会見の司会が遮った。 「時間を過ぎてしまいましたため、こちらにて本日の会見は以上とさせていただきます。」 署長はもう一度頭を下げてから、会議室を後にした。 その口元の笑みに、誰も気づくことはなかったという。
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