黒の王と白の姫

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 この魔女は先王に恋をし、王妃を呪い殺したのだ。  そして先王が亡くなってしまったあと、息子であるノワールに同じ道を歩ませようとしている。 「なんて事を!」  私が叫んだ瞬間、ノワールは地を這うような低い声で告げた。 「頭を冷やせ」  彼はカッと目を見開くと、氷の剣に魔力を込め、魔女をを氷柱に封印する。 「…………はぁ……っ」  私は止めていた息を吐き、安堵して脱力する。  ノワールはそんな私を支え、笑いかけてきた。 「せっかく嫁いでくれたのに、不快な思いをさせてすまない。助けてくれてありがとう」  記憶のままの彼が戻ってきて、私はクシャッと笑うと涙を零した。 「いいえ、どういたしまして」  微笑み合った私たちは、呪いを解くためではない、本当のキスをした。  私たちが気持ちを込めたキスをしている間、窓の外では春一番のような強い風が吹き、闇に包まれていたアクトゥール王国を光に塗り替えていく。  空からはキラキラと雪のように光の粒子が舞い、それに触れたものはもとの色を取り戻していった。  人々が着ていた黒い服は色鮮やかな服に代わり、どんよりと落ち込んでいた表情に活力と笑顔が戻る。  その後、私たちは皆に祝福され、盛大な結婚式を挙げた。  大聖堂を出た私たちは、馬車に乗って花びらが舞い散るなか民衆に手を振る。 「〝白の王妃〟ばんざい!」  誰かが叫び、皆が拍手をして同様に私を呼ぶ。  かつて〝白の姫〟と呼ばれていた私は〝白の王妃〟と呼称を変え、国を救った恩人として貴族たちや民から支持を集めたのだった。  完
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